ゲームの同人小説です。
シリアス&ほのぼの中心。
更新はかなりスローペース…
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幻水Ⅴ
ザハーク*王子
茨の花言葉
『貴方の残酷さに関わらず私は貴方を愛する』
あんまし話には関係ないけど(オイ)
王子はザハークの本質が好きなので、どんな残酷なことをしてもきっとザハークが好きなんだよ、という妄想。
日常的に想いを深めていく関係が好きなんですよ(笑)
ザハーク*王子
茨の花言葉
『貴方の残酷さに関わらず私は貴方を愛する』
あんまし話には関係ないけど(オイ)
王子はザハークの本質が好きなので、どんな残酷なことをしてもきっとザハークが好きなんだよ、という妄想。
日常的に想いを深めていく関係が好きなんですよ(笑)
それはいつもと同じ日常。
沈む夕日。
赤銅色の空。
茨に囚われた銀色。
指をすり抜けた懐かしい日々。
今は遠いあの日の輝き。
女王騎士であるザハ-クはいつもように業務に追われていた。
慌ただしく午前中を過ごし、ようやく取れた遅めの休憩。
自室に向かう回廊を過ぎると庭園から軽やかな笑い声が響く。
ふと目を向けた先にうつる銀色の輝き。
自然と足が止まる。
花に囲まれた庭園に寄り添って座る栗色の髪の少女と銀髪の少年。
それを囲むように座るのは二人の女王騎士と女王騎士見習いの少女。
輪の中心におかれた少年の頭には色とりどりの花冠。
二つ乗せられたそれにどこか困ったように笑う少年。
少女の手によって更に三つ目が乗せられる。
暖かな風景。
それを裏切る胸の痛み。
少年には決して与えられることのない王冠。
『女王によって治められるファレナに男の王族は必要ない』
耳を塞いでも聞こえてくる心無い者達の雑音。
必要ないというのなら彼らの方が相応しい。
しかるべき理由と証拠があればこの手で排除してやれるものを。
無意識の内に剣に手が伸びる。
ギリリと音が鳴るほど強く、その柄を握った。
護るために強くなろうと心に誓った。
実際は何も出来ず、ただ見守るだけ。
歯痒さと苛立ちだけが日々募った。
思考の渦から抜けだし、再び目を向けた先で少年が笑っていた。
こちらに向け大きく手を振るその姿に僅かに微笑む。
目視では確認できないほどの僅かな微笑を礼をとる事で隠す。
踵を返し、自室に向かう間も胸の痛みが治まる事はなかった。
僅かな休息の後、再び忙しい時を過ごす。
気が付けば既に日は傾き、空は見事な赤銅色に染められていた。
自室へと向かう途中、あの庭園で足を止める。
いつもは気にもしないそれへと足を向けたのは、無意識にあの銀色を求めていたからか。
様々な種類の花が咲き乱れるそこはまるで別世界のようでどこか落ち着かない雰囲気を醸し出していた。
昼間見たときはあれほどに温かく見えた空間がまるで嘘のように感じる。
たった一つの存在が自分の景色をも狂わせるのかと苦笑する。
「そこに誰かいるのか?」
小さく聞こえたその声に一瞬、息を詰まらせる。
聞き間違うことなどないその声。
「ファルワタート殿下?」
思わず呟いた声にどこか弾んだ声が返る。
「ザハーク?良かった、少し困っていたんだ」
困っていたという言葉に辺りを見渡す。
「何処に…」
「こっちだ。茨の影」
声を頼りに茨の垣根の裏に回る。
そこで見たものに思わず力が抜けた。
「…何をしておられるのですか、貴方は」
僅かに低くなった声にその人は笑顔を返す。
いつもと同じどこか困ったようなその笑顔。
つられて此方の表情も緩む。
「すまない。どうにも動けなくて」
さらりと風になびく銀色の長い髪。その一束にしっかり絡みついた茨の枝。
まるで引き止めるように。
繋ぎとめるように。
「どうしたらこんな事態になるのかお教えいただけますか?王子殿下」
言いながらもその狭い空間へと入り込み、絡みついた茨へと手を伸ばす。
二人並ぶと一杯になってしまうその狭い空間で自然と体が密着する。
あまりに狭く手が届かないため、その細身の身体を抱きこむような形になり傍から見たらまるで抱き合っているかのようだ。
僅かに息を詰め、平静を装う。
銀色の髪が頬を擽った。
「髪を解くだけです。ご無礼お許しを」
一瞬、強張った身体から力が抜けるのを感じる。
寄り添うように更に近くなった温もり。
「…近道をしようとしたんだが、まさか絡まるとは思わなかった」
照れたように微笑むファルワタート。
ザハークの指は器用に茨から銀糸を解いてゆく。
「このような場所をいつも通っておられるのですか?」
自然と声が柔らかくなる。
これほどまでに近い場所で過ごすのは随分と久しぶりだった。
アーメス侵攻後、生き残った女王騎士は少ない。
ザハークもまた王子の専属護衛の任から外され、忙しい日々を送っていた。
新しく護衛についたのは確かカイルという新米女王騎士だったか。
荒削りながら確かな剣の腕を持っている。
あの不真面目極まりない性格だけは受け入れがたいものがあるが。
「時々だ。いつもという訳じゃないし、ここは秘密の抜け道だから」
リオンにも内緒なんだ、と無邪気に笑う。
いつも彼の傍に仕える騎士見習いの少女。
彼の父であるフェリドが突然連れ帰ってきた孤児。
生い立ちも素性も何もわからないものの、その性格は素直で真面目であることから、ザハークは彼女をそれなりに認めていた。
少なくともカイルよりは王子を任せるに値するだろう。
将来的にはカイルよりも立派な女王騎士になるかもしれない、と。
「…では私は秘密を知ってしまった事になりますね」
揶揄混じりに訊ねた声に王子が楽しげに笑った。
「じゃあ、二人だけの秘密だ」
くすくすと胸元で笑う。
伝わる振動がどこかくすぐったく感じる。
「御意に」
最後の一筋が茨から開放される。
するりと解けた髪に名残惜しさを感じ、そっと一房を掬い取った。
「…殿下、紙留めはどうされました?」
いつもその長い銀髪を纏めているはずの髪留めが今日は見当たらない。
きちんと編まれている髪も無造作に垂らされたままだ。
「…ああ、無くした」
先ほどまでの楽しげだった様子が一変し、項垂れた様子に眉をしかめる。
「…何か、あったのですか?」
既に茨から開放された髪に指を絡める。
腕の中の少年は何も言わない。
「…私には、話せませんか?」
僅かに声を潜ませる。
秘密の話をするように。
「…綺麗な髪だと褒められた。まるで姫君のようだと」
ポツリと小さな声が返る。
『姫君』とい言葉に眉をしかめる。
「折角の綺麗な髪を纏めるなどもったいないと、いっそ髪飾りをつけたほうが良いのではないかと笑われた」
腕の中の身体が僅かに震えている。
その姿に胸の痛みを思い出した。
ファレナの貴族の中には男の王族を必要以上に下に見る輩が大勢存在する。
その殆どが過去の女王の時代から権力を振るっている者たちばかりだ。
現女王がアルシュタート陛下に移り変わっても、引き摺った悪政はそう簡単には覆せない。
女王によく似たファルワタートの整った容姿とその銀色の髪がそんな心無いものたちの嘲りを煽っているのも事実だった。
『宝の持ち腐れ』
そんな言葉を何度か耳にした。
その度に言い様ない怒りと屈辱を胸に溜めた。
おそらく、髪留めは調子付いた貴族連中に奪われたのだろう。
嘲りの言葉とともに。
今頃は、フェイタスの水底か。
いかに女王であっても証拠がなければ罰することは出来ない。
そして、そういう者達ほど小賢しいほどに頭が回るのだ。
証拠を残すような真似はしないだろう。
「いっそ短くしてしまったほうが良いのかもしれないな」
いつの間にかすっかり身を任せた身体が重さを増す。
凭れ掛かるようにファルワタートはザハークに寄り掛かった。
「銀髪で、なければよかったのかな」
ポツリと零れた言葉に一際、強く胸が痛んだ。
「…私は、殿下の髪をとても美しいと思います」
囁くように告げた言葉にもファルワタートは顔を上げない。
「殿下の髪色は陛下よりも柔らかく、優しい色です……陛下とは異なる色です」
いまだ指に絡めたままの銀糸をそっと口元に引き寄せる。
「…たかが髪一つで、貴方の何が変わるというのですか?フェリド閣下のような栗色なら違っていたと?」
静かに語りかける声にファルワタートはゆっくりと首を横に振る。
「強くおなり下さい、殿下。私が言うまでもなく、貴方はそれを理解しているはずだ」
強くならねばならぬ理由を。
そのためなら自分は国さえ裏切るだろう。
この人が、この人らしく生きれるのなら。
心すら、捨てるだろう。
指に絡んだ銀色の髪。
いばらから解き放ったそれを自らに絡める。
この人は誰にも囚われてはならない。
自らの思う道を進んでいけば良い。
…たとえ道が分かれても。
貴方を想う気持ちはここにある。
茨の檻は、沈む夕日に照らされて。
花咲き乱れるその空間に、今は二人。
『たとえ道が分かたれても、心はここに』
END
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