ゲームの同人小説です。
シリアス&ほのぼの中心。
更新はかなりスローペース…
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ルクス小説第5段。
恋は戦争(by初音ミク)
リュウVSナツキ。
でもリュウ圧勝(笑)
リュウ*アツキ+ナツキ(ほのぼの?)
「私、知ってるもの」
少女の突然の言葉にアツキは困惑気な表情を浮かべた。
大きな二つのお下げが揺れている。
「私、知ってるわ、アツキ」
寂しげな瞳で呟き、少女は唇を尖らせた。
拗ねていると体中で表現する少女にアツキは困ったように首を傾げた。
「ナツキ?」
少女は俯き、悔しげに唇を噛んでいる。
その小さな手を胸の前で組み、じっと何かに耐えている。
「知ってるの。だけど、私、負けないから!」
そう叫ぶと少女は身を翻し、軽やかに駆けていく。
パタパタと軽い足音が遠ざかっていくのをアツキは呆然と見送った。
突然の出来事に、アツキはただ首を傾げるのみだった。
始まりはそれから数時間を遡る。
踊るような足取りでナツキ・ヴェネフスカヤは白い廊下を駆けていた。
定期的に行われる嫌いな検査は、オールクリアと言う素晴らしい結果を残し、無事終わり、オペレータールームに戻ればノーラから大好きなアツキの帰還という嬉しいニュースを聞かされた。
すぐにノーラからアツキの居場所を聞き出し、ナツキは走り出す。
久しぶりに会える大好きな人。
きっと、ここで待っていても、アツキは会いに来てくれるけれど。
少しでも早く、お帰りなさいと告げたいから。
そんな、至極ご機嫌な様子で駆けていくナツキをノーラは苦笑しながらも優しい眼差しで見送る。
ただ、この時、ナツキは喜びのあまり、完全に忘れていたのだ。
任務に付いていたのはアツキだけではなかった事を。
彼女の天敵とも呼べる存在も、ともに帰還しているという事実を。
フォート施設内部に備えられた巨大な図書室。
そこは最早、図書館と呼べるほどの規模で。
絵本から哲学書、何処から入手してきたのか、一般的には手に入らないような専門書まで幅広く、途方もない程の種類の本の海。
高い壁一面に並ぶ、色とりどりの本の列。
迷路のように複雑に並ぶ本棚。
フワリと広がったスカートをひらひらと翻しながら、ナツキはその迷路を駆けていく。
図書室に入ってすぐ司書を勤める女性から聞いたアツキの居場所。
広い図書室の奥まった場所にある、哲学書が並ぶ棚。
高く聳え立つ本棚の間をナツキは軽やかに走り抜ける。
すれ違う大人たちは少女の場に合わぬ行動に苦笑を溢しながらも制止しようとはしない。
その笑顔が、あまりにも喜びに満ちていたから。
嬉しい、早く会いたい、と身体全体で表す少女を誰が止めることなどできるだろうか。
走って、走って、漸く辿り着いたそこに佇む、求めた姿。
綺麗なグレイアッシュの髪、すっと伸びた背筋、すらりとした長い手足。
黒いジャケットに覆われた、その細身の身体にナツキは走りこんだ勢いのまま飛び付いた。
「お帰りなさい!アツキ!!」
「っ!?」
そこで、一つ問題が起きた。
ナツキの勢いが本人の予想以上に強過ぎたのだ。
飛び付かれたアツキは咄嗟の事に踏ん張りが利かず、目前の本棚へと勢いよく叩きつけられる。
反射的に腕を上げ、本の壁から顔面を守る。
が、勿論、その勢いを殺せるわけではなく。
本棚は大きく揺れ、一番高い棚に並べられた本が大きく崩れた。
その真下には、抱き付かれたままのアツキと、抱き付いたままのナツキ。
「ナツキッ!」
アツキがナツキを庇うように覆い被さる。
分厚い本の雪崩が二人を覆い尽くした。
ナツキは思わず目を瞑る。
鈍い音が頭上で何度も響いた。
足元に、厚みのある本が何冊も散らばる。
遠くから、女性の悲鳴が聞こえた。
バタバタと周囲に人が集まってくるのを感じ、ナツキはきつく瞑っていた目をそっと開いた。
「全く…帰って早々、何をやっているんだ、お前達は」
心底、呆れた、と言うような低い声が高い位置から振ってきた。
アツキのものではない低いそれに、ナツキは目を瞬かせて頭上を見上げた。
抱き込まれたアツキの腕の中、光を遮るように覆い被さる長身の男。
右腕を頭上に掲げ、左腕でアツキをその胸元に抱き寄せている細身の、けれどがっちりとした硬い身体。
その眉間には、深い皺。
「…リュウ・イー」
アツキが呆然と呟く。
ナツキもまた、アツキとリュウ・イーの間に挟まれたまま、声を出せずにいた。
状況が収まったのを確認し、リュウ・イーがスッとその身を離し、僅かに乱れた髪を無造作にかき上げる。
そんなさり気無い仕草さえ、様になっているのが気に入らない。
「ナツキ?大丈夫か?」
アツキは未だ自分に抱きついたまま、ピクリとも動かないナツキを覗きこんだ。
琥珀色のナツキの瞳がリュウ・イーをじっと見つめていた。
羨望と嫉妬の混じった瞳。
その視線に、リュウ・イーは目を細めた。
何故か空中で火花を散らす二人に、アツキは首を傾げる。
動かないナツキに溜息を吐き、アツキはリュウ・イーへと視線を移す。
「リュウ・イー、ありがとう。助かった」
アツキの素直な謝辞にリュウ・イーは、じっとその顔を見つめる。
すっ、と長い指がアツキの頬へと触れた。
「掠ったか…」
ポツリと呟かれた言葉にナツキもその指先へと視線を移す。
触れた指先、アツキの白い頬に赤い線が一筋走っていた。
雪崩れた本の内の一冊がアツキの頬を掠めたのだ。
「あ…」
ナツキは漸く、自分が何をしたのかを知る。
自分の行動が、結果的にアツキに傷を負わせたのだ。
「アツキ、ごめんなさい!私…」
弾ける様にその身体から離れる。
小さな体が震えていた。
大好きな人を傷つけてしまった。
そんな思いにナツキの瞳が歪む。
「大丈夫。何ともないよ」
震えるナツキにアツキが微笑む。
その頭に手をやり、優しく撫でる。
「ナツキこそ、怪我はないか?」
怖かっただろう?
何処までも優しいにアツキにナツキは胸が締め付けられるのを感じて、思わずしがみ付いた。
涙が溢れて、前が見えない。
「…よく覚えておくんだな」
アツキの胸にしがみ付き、泣きじゃくるナツキに低い声が掛けられる。
見上げた先に佇むリュウ・イーの瞳はいつもよりも冷たく感じた。
「考え無しの行動は、不測の事態を引き起こす」
硬い声にナツキの身体が震える。
その黒い瞳が責めていた。
「…後悔したくなければ、よく考えて動け」
言いたい事だけを告げてリュウ・イーは踵を返す。
その背中をナツキは唇を噛み締めながら見詰めていた。
自分の軽弾みな行動がアツキに傷を負わせた。
アツキを危険に曝した自分。
自分を庇ってくれたアツキ。
リュウ・イーは、アツキを守ってくれた。
ぎゅっと力を込めてアツキにしがみ付く。
そんなナツキにアツキは困ったように微笑んだ。
「大丈夫。言葉ほどリュウ・イーは怒っていないから」
別に、リュウ・イーが怒ったからといって、怖くも何ともないけど、とナツキは自分自身に小さな嘘を吐く。
本当は、あの冷たい眼差しが怖くて堪らなかった。
リュウ・イーはいつも正しいから。
彼は、自分にも他人にも嘘を吐かないから。
そんな彼をアツキが心から信頼しているのが解るから。
だから、ナツキはリュウ・イーが嫌いだ。
アツキの『特別』になれるリュウ・イーが嫌いだ。
けれど、それ以上に。
アツキを守れない自分が嫌い。
アツキに守られてばかりの自分が嫌い。
子供じみた嫉妬。
わかっているけど、止められない。
「…アツキの、『特別』は、誰?」
しがみ付いたまま、ポツリと呟く。
本当は、答えなんて、聞かなくても知っている。
「ナツキ?」
唐突な問いかけに、アツキが眼を瞬かせる。
「…ごめんなさい」
俯いたまま、ナツキはアツキから身体を離す。
「いいの、アツキ」
ぎゅっと唇を噛み締める。
「…私、知ってるもの」
今はまだ、敵わない。
あの、嫌味なくらい、大人な男には。
けれど、決めたから。
いつか、アツキに相応しい、大人の女性になる、と。
いつか、アツキの『特別』になる、と。
だから、今は、知っているだけでいい。
少女の突然の言葉にアツキは困惑気な表情を浮かべた。
大きな二つのお下げが揺れている。
「私、知ってるわ、アツキ」
寂しげな瞳で呟き、少女は唇を尖らせた。
拗ねていると体中で表現する少女にアツキは困ったように首を傾げた。
「ナツキ?」
少女は俯き、悔しげに唇を噛んでいる。
その小さな手を胸の前で組み、じっと何かに耐えている。
「知ってるの。だけど、私、負けないから!」
そう叫ぶと少女は身を翻し、軽やかに駆けていく。
パタパタと軽い足音が遠ざかっていくのをアツキは呆然と見送った。
突然の出来事に、アツキはただ首を傾げるのみだった。
END
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