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ゲームの同人小説です。 シリアス&ほのぼの中心。 更新はかなりスローペース…
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拍手コメントに励まされ、突発的に出来上がった作品です(単純)


久しぶりなので設定が間違っている可能性大。
というかほぼ(というか全て)捏造です。


関係ないけど今まで『捏造』を『模造』って書いてた管理人(馬鹿)

学が無いことがばれる…(恥)


お話的には『月色の子どもside劉毅』から数ヵ月後の設定です。







白い天井。
白い壁。
白い床。

アツキの朝は同じ景色から始まる。

監視の下、朝食をとり、検査を受ける。

筆記であったり、意味も解からない数字の羅列であったり、様々なものを受ける。
記号の書かれたカードを当て続けるというものもあった。

昼食をとり、午後は読書をする。

特にそう決められている訳ではない。
午後は所謂、自由時間であり、アツキの好きなように過ごすことを許された時間だった。

変わらず監視は付いたままであり、FORT施設内からは出ることを許されなかったが。

アツキがFORTで過ごすようになってから数カ月が経とうとしていた。

外すことを許されない右目の眼帯。
僅かに痛みを感じさせる左腕。
明らかにサイズが合わないのに抜けることのない不思議な指輪。

消えることのない悪夢。

変わらない毎日。
朝、目覚めて、同じ検査を繰り返し、夜は本を読み漁る。

意識を取り戻してからアツキは必要なこと以外を一切喋らなかった。

かかりつけの医者は精神的なショックから一時的に内向的になっているのだと告げた。

監視につく人間は日によって変わったが誰もアツキと言葉を交わそうとはしなかった。

時折感じる憐れみと好奇の目。


敢えて気付かないふりをした。

それは決して心地いいものではなかったから。
それでもアツキは不満を漏らすこともなく同じ毎日を繰り返した。


そして、その日も同じ朝であり、同じ午後の一時を過ごす筈だった。

「子守りを変わろうか?」

アツキの自室に見知らぬ長身の男が訪れた。
腕を組み、口角を僅かに歪ませた薄い微笑みを浮かべ、彼は監視員の男に話しかけた。

「何をするでもなく、ただ座っているのは退屈だろう?少しコーヒーでも飲んできたらどうだ?」

顎で休憩室の方を指す男に何やら硬直していた監視員は慌ててこれが仕事だからと断わりを入れていた。

仕事中に持ち場を離れるなど許されないと何故かしどろもどろになりながら男に告げる監視員にアツキは首を傾げた。


何故、彼はあんなに怯えているのだろうか?


普段、監視に付く者たちの心は皆一様に僅かな波はあっても大きく乱れることがない。
アツキの『特別』な右目は眼帯に覆われ、何かを移すことはできなかったが感じとることはできた。

ざわざわとした漣の様なそれが人の心の動きだと気付いたのは随分と前のことだった。

今、監視員の心が大荒れの嵐のようにざわめいているのをアツキは感じていた。

「心配するな、所長に許可はもらっているんだ。本の数分、話をするだけさ」

長身の男は笑顔を浮かべたまま、監視員の肩を軽く叩き、続く一連の動きで彼を外に押しやる。
半ば強引に戸惑う監視員を廊下に押し出した男はそのまま扉を閉めると、ゆっくりと振り返った。

短い黒髪。
アジア系特有の白い肌。
細身で背が高い割にどこかがっしりとした安定感のある体躯。
左耳にのみ付けられた小さなピアス。

そして、その瞳にアツキは息を飲んだ。


黒く、底光りするような鋭い眼差し。


アツキの中にフラッシュバックする光景。

雨の音。
それに紛れる肉を食み、骨を砕く音。
雷鳴に掻き消された悲鳴。


掠れる意識で見上げた細身のシルエット。

静かに見下ろす黒い瞳。


「俺を、覚えているな?」


低い声。

息を詰まらせ、微かに震えながら、それでもアツキはその瞳を強く見つめ返し、頷いた。

「いい眼だ」

ニッと皮肉げな笑みを浮かべ、彼はアツキの前まで歩み寄ると、その前に椅子を置き、アツキと対峙するように腰かけた。

ベッドに腰かけたアツキの顔を覗き込むように、膝に肘を置き、組んだ指の上に顎を置く。

「俺を探していたな?」

口元は笑っているのにその目はちらりとも笑っていない。
アツキはびりびりとした緊張感の中、頷いた。

探していた。
ずっと。
意識を取り戻したあの瞬間から。

アツキが今、一番求めているものをこの男は知っている。

「教えてほしいことがあるんだろう?」

その言葉にアツキは拳を強く握りしめ、引き千切る様に右目の眼帯を外した。

「サイレントの滅ぼし方を教えてほしい」

それは、FORTに来てから初めてアツキが自らの意思で発した言葉だった。
強く強くアツキの中で抑え込まれていたサイレントへの憎悪。

眼帯に隠されていた右目は爛々と金色の光を放っている。
それに触発されたかのように左手に嵌められた指輪が熱を持つ。

微かに光さえ灯すそれにアツキは気付かない。

男は無言でそんなアツキの姿を見つめていた。
僅かに細められた黒い瞳は静かに何かを決断しようとしていた。

僅かな沈黙の後、男は背を伸ばし、仰向き、短く息を吐きだすと、真っ直ぐにアツキを見つめ返した。

「…手を出せ」

低い声にアツキは迷うことなく左手を差し出した。

「…『これ』の使い道は知っているという訳か」

男は口元を歪ませ、アツキの指に引っ掛かっている指輪に触れた。
そのまま、アツキの手首を掴み、己の胸に強く押し当てた。

「実際には触れる必要はない。要はイメージの問題だからな。初心者にはこの方がやりやすいだろう」

眼を反らすことなく、淡々と男は語る。
アツキは手のひらに伝わる温もり、鼓動、更にその奥のものに手を伸ばすように意識を集中させた。

「…サイレントは心に宿る。まずは相手の心を捕えろ」

アツキの右目に常とは違うものが写りこむ。
闇の中、そこに『何か』があるのを感じる。

「相手の心が見えたなら、サイレントも見える。大抵は心の奥に潜むものばかりだ、お前の力で引き摺り出せ」

アツキはいわれるがままに彼の心の中を探る。
だが、そこには何もなく、何もつかめない虚無だけが広がっていた。

その冷たさにアツキは息を飲み、現実に引き戻される。
咄嗟に離そうとした手は微動だにせず、驚きに男を見上げたアツキはその身を震わせた。

男の瞳の中の深淵に一瞬にして飲み込まれる。

身動きも出来ず、呼吸もままならない。
恐怖に竦むアツキに男が低い声で語りかけた。

「これが心を捕えられた状態だ」

本格的に捕えた訳ではないがな。

男がつまらなそうにポツリと呟く。

「…さっきの続きだ。サイレントを捕えたのならば後は潰すだけ。簡単だろう?」

アツキの手がその意志に背き、男の胸に再度、手を這わす。

蘇る感覚。
その心に入り込み、内側から、潰す。
男の言葉をなぞるように。

アツキの右目が一際強く輝き、右手の指輪に熱が灯る。


「ッ嫌だ!!」


一瞬の閃光、衝撃。

気付けばベッドの端で恐怖に息を切らせ、その身を抱える自分がいた。
心臓が忙しなく鼓動を刻み、冷たくなる体は震えが止まらない。

今、自分は何をしようとした?

眼の前の男にはサイレントなどいない。
それは最初からわかっていた。

それなのに、今、アツキはこの男の心を、その『精神』を殺そうとした。

『殺人』の恐怖にアツキは震えた。

「どうした?これがお前の知りたかったことだろう?」

変わらぬ低い声にアツキは身を震わせ、怯えたように眼前の男を見上げた。
死に掛けたというのに彼の瞳には怯えも怒りも浮かんでおらず、ただ、冷たい光が宿っていた。

言葉もなく、茫然と男を見つめ返すアツキに男はどこか諦めたように呟いた。

「サイレントに寄生された人間は大概が精神を食い荒らされた状態で発見される。それを駆除するにはその人間の精神ごと始末するのが最も安全で的確な手段だ」

再発の危険性も減るしな。

男の呟きをアツキはただ聴き入る。
徐々に治まっていく鼓動と震えに混乱していた頭も冷えていく。

「…お前の持つ『ガウェイン・リング』ならば、サイレントのみを切り離すことは可能だろう。だが、それは極度に危険が伴う上にサイレントの感染が進んでいた場合、感染者の意識は戻ることはない。ただの生きた屍と化すだけだ」

男は淡々と語る。
諦めとはどこか違う冷めた瞳のままで。

「よしんばサイレントのみを潰すことに成功したとしても、一度サイレントに付け込まれた人間は再度、感染する可能性が高い」

鼬ごっこになるのが関の山だ。

アツキは男の言葉に耳を傾けながら、先程触れた男の心を思い出す。
氷のように冷たい闇が広がっていた。

何を思って、この人は自分にそれを許したのだろうか。

死のリスクまで犯して、いったい自分に何を伝えたいのか。
アツキはその言葉を一言も聞き洩らさないように耳を傾けた。

「…いつか、おまえは人を殺すことになる。それは避けられようない事実だ」

彼は真剣な眼差しでアツキを見つめていた。
黒い瞳が問いかけていた。

お前はそれに耐えられるのか、と。



僅かな沈黙の後、アツキはもぞもぞと男に近付くとそっとその手を両手で包み込んだ。
アツキの指も男の指も冷え切ってはいたが、それでも触れあった箇所からジワリと熱が灯っていくのが嬉しかった。

「あなたの心は、すごく冷たくて、怖かった」

突然のアツキ行動にも男は驚く素振りも見せず、ただじっとしていた。
アツキは自分自身に語る様にゆっくりと言葉を紡いだ。

「あなたに心を捕らわれた時も、寒くて、怖くて、苦しかった」

重ねた掌に熱が広がる。
少しずつ、互いの熱を分け与えるように。

「きっと、サイレントに感染された人も怖くて、苦しいんだと、思う」

アツキはその手に力を込めると、強い眼差しで男を見つめた。

「俺は、そんな人達を助けたい」

全力を尽くす。
微かな希望があるなら諦めない。


…救えないのなら、せめて。

人として眠らせたい。


人殺しと呼ばれても。
偽善者と罵られても。


自分の意思でそうしたい。



今まで、アツキの中にはサイレントへの憎しみしかなかった。
サイレントを滅ぼせるなら何でもしようと決めていた。

それは今でも変わらないのかもしれない。


けれど、そんなアツキに眼の前の男はその身をもって現実を教えてくれた。

サイレントを滅ぼすということは、結果的には人を滅ぼすことだということを。
サイレントと同列の存在になるということだと。

それが現実であるならば。

自分は足掻き続けよう。
人の僅かな可能性に縋り続けよう。

サイレントへの憎しみと人への希望を両方持って、足掻いて見せよう。


アツキの言葉に男は眩しげに眼を細めた。
そして微かにだが、穏やかな笑みを見せた。

「俺はまだ、あなたの名前を聞いていない」

その手を離すこともせず、アツキは真っ直ぐに男を見つめた。
男は不敵な笑みを浮かべ、握られていた手を握手の形に握り返した。

「リュウ・イーだ。俺の名を覚えておけよ、西条アツキ」

そのふてぶてしい言い方にアツキは久しぶりに本の少し声を出して笑った。



その後もアツキの生活は変わりなく続いた。

一年過ぎる頃には監視も(表向きには)なくなり、サイレントやルクス・ペイン、FORTの役割についてなど、専門的な勉強も受けられるようになった。
最近では、もう少ししたら実践的な訓練も受けられるだろうと将来を有望視されている。

そしてアツキは、あの頃よりも笑うようになった。
表情は乏しいながらも他者とのコミュニケーションを拒まなくなった。

何よりもあのリュウ・イーと穏やかに談笑(しているように周りからは見えるが7割はリュウ・イーのお小言である)する姿で周囲を驚かせた。




…余談ではあるが、この頃からあまり本部に顔を出さなかったリュウ・イーがきちんと定期報告に本部を訪れ、今まで立ち寄りもしなかった売店のスウィーツコーナーに足蹴く通う姿が目撃され、周囲を慄かせたこともここに述べておく。


(…アツキ、お前のどこにその大量の菓子が収められるのか、俺は疑問でしょうがないがないんだが…)
(……普通に胃袋だけど?)







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